小気味よく重ねられるユーモラスなリーディング。小林大吾「三角バミューダの大脱走/ paradise lost feat. The Satchmos」
早速ですが2本目の記事。
今回は小林大吾氏の「三角バミューダの大脱走/ paradise lost feat. The Satchmos」です。
''――番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします。
今朝未明、地中海に浮かぶ楽しげな監獄『ペリカン』で、原因不明の大規模な爆発があり、島全体が一夜にして沈没しました。
この事故によるけが人の数や、囚人の足のサイズ、また、三ッ星シェフはどうなってしまったのか、など、詳しい情報はまだ入ってきていません。繰り返します……''
小気味よく重ねられる、ユーモラスなリーディング。
歯切れよくスウィングする、レトロジャズなミュージック。
聴けば覚えて口ずさむこといかんともしがたくまさに請け合い、
どうにもこうにもにっちもさっちも「耳を貸せガリンペイロ!」
なお、主要登場人物''ムール貝博士''については下記公式HPを参照。
詩人である小林大吾氏のつくる一編。
アルバム『詩人の刻印』において「アンジェリカ/ perfect angelica」「饗宴/ eureka」に並び、ストーリーテリングに重きが置かれた本作品。
といっても、じゃあ物語性が強いのかと聞かれるとうーんと唸らざるを得ないところもあって、やっぱり小林大吾氏の作品は類い希なるすばらしい詩でしかありえません。
どこからどう聴いてもユーモアとライムに富んだ自由というより奔放な物語が大風呂敷の斜め上で繰り広げられています。
天才も舞い戻る難攻不落の監獄で、脱獄者には退職金まで支給される始末。
要するに物語として成り立っているかどうかなんてまるでどうでもよくって、詩と音とを感じるがままに聴けばいいと自然と思うのです。
そんなだから小林大吾氏のように麻薬的に言葉を操れたらなあというあこがれが強すぎて、なんというかこういう調子を整えるための間投助詞的なはっきりありていに言って無駄な修飾が増えに増えてしまうところもない有様です。書いてる側は実に気持ちがいいものですが読み手にとっておもしろいかどうかは謎、その謎たるや以下云々。
さてさておき、小林大吾氏に叙事詩的作品はいくつもあるものの、「三角バミューダの大脱走」は現在のところそのなかでもいちばん賑やかな一編ではないかと思います。
聴いていると熱気に沸いた古典的な酒場かどこかで箱入りの喜劇を観ているような気分。
ナレーションやセリフとして客演がたくさんあるのも楽しい。
それもそれで言葉のリズムを逃していないところがまた憎からず。
リリックは上述のことながら、フロウ、ライムもラップとしてみても本当にイケてる。
もちろん氏は詩人なのですが。音楽をジャンルでくくるのは難しいものです。
小林大吾氏についても、また何度も記事にすると思うのでお楽しみに。
デザイナーとしての側面なんかも紹介してないですし……。
ひそかにいまをときめくこの詩人、youtubeやsoundcloudで探してもほとんど検索に引っかからないので、すこしでも興味をもたれた方はぜひ作品のご購入を。東京周辺に住んでいる方であれば「オントローロ」にも参加できるだろうことがうらやましくてうらめしいです...
- アーティスト: 小林大吾
- 出版社/メーカー: FLY N' SPIN RECORDS
- 発売日: 2014/06/21
- メディア: CD
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なお古いリンクのようですが、下記のページで『詩人の刻印』収録の「饗宴/ eureka」および「手漕ぎボート/ helmsman says」のデモ版が公式に視聴できるようです。
FLY N`SPIN RECORDS's Songs | Stream Online Music Songs | Listen Free on Myspace
下記のブログの方が、アルバム全体についてすごく熱をもって語ってくれています。発売当初の感想らしいのも貴重かもしれません。興味をもたれた方はぜひ一読を。
小林大吾『詩人の刻印』 | すばらしくてNICE CHOICE
では、また。
2/27更新
→公式の音源がYouTubeにアップされたため追加。