鬼気迫る鮮烈なリリックの連続。Shing02「真吾保管計画 (newsflash)」
14本目の記事。
これぞ日本のアンダーグラウンド。Shing02氏の「真吾保管計画」をご紹介。
エヴァンゲリオンの''人類補完計画''をもとにしたアングラ感あるユーモラスなタイトルですが……。
リリック(official)はこちら→empirical XXII the haven of artistic minds
お客さん、いいモノありますよ。
頭の中を犯す5分間の極上モルヒネ。
ライムの香りが知識への食欲を増進するのです。
副作用は創作意欲ですから、ご注意を。
まず、耳を釘付けにする冒頭。三島由紀夫割腹自殺ニュース放送のサンプル。
その後につづくのは鬼気迫る鮮烈なリリックの連続。
勢いはとどまることなく、ラストの''MCの首切って口にライムを詰め込む酒鬼薔薇''まで、リリックを脳へ叩きこまれるような感覚に陥ります。
とにかくもはやすべてがパンチラインのような一作。
メジャーからマイナーまで時事ネタをとりこみながら、かつ韻を意識しているフロウがどこを聴いてもグルーヴィー。随所に重ねられる映画やラジオ音声のサンプルまで、まったく無駄なく、尋常でなく練り込んであります。
あえて音なしにリリックの意味だけに注目しても、とくに下記のヴァースはおもしろいしわかりやすいしとても知的。ラッパーの安っぽい社会批判をディスる文脈。
もうたくさん!誰でも思いつく社会批判
だって毎回決まった言葉を「就職して名刺・名刺・名刺」 (修飾して名詞、名詞、名詞)って結局サラリーマンと一緒
なお本作品は、ファーストアルバム『緑黄色人種』に収録されています。
各所でも言われておりますが、今回のShing02氏、先日紹介しましたBUDDHA BRANDは、日本のヒップホップに歴史と呼べるものがあるとすれば、彼らの登場がシーンを変えたのだ! といっても差し支えないほどの存在です。(ほか、THA BLUE HARBも同等の存在になるでしょう。個人的にはそこに降神なども加えたいところですが…)
そういったマスターピースの一作としても、この機会にご一聴を。
- アーティスト: SHING02
- 出版社/メーカー: Mary Joy Recordings
- 発売日: 2003/08/22
- メディア: CD
- 購入: 3人 クリック: 71回
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いろいろと書きましたが、この作品をとりあえずはじめて聴いたとき最も衝撃的なリリックはやはり''酒鬼薔薇''でしょう。こればかりにフォーカスしてしまうのもなんなので本文ではあまり触れませんでしたが...。(''酒鬼薔薇''の事件概要についてはWikiを参照。→神戸連続児童殺傷事件 - Wikipedia)
97年の酒鬼薔薇聖斗事件を、99年時点の作品でネタに使うこと。
あまりにもセンセーショナルで、だからこそアンダーグラウンドは最高に盛り上がること。
それをわかったうえでやっているだろうShing02氏には感服です。
そんな前衛的なアーティストを知ったのがnujabes氏のつながり(Luv (sic)シリーズ)からだというのも不思議な感じがします。
あとこれホント私事ですが、今回の「真吾保管計画」はリリックすべて覚えてて。
こういう秀逸なリリックは、ぜひ実際に自分の口を動かしてラップしてみてください。ホント楽しいですよ。
では、また。