DIG&SELECT!!

グルーヴを信じて。音楽・書籍・珈琲等の嗜好品を中心に、ヒトのココロを揺さぶるものを。

ゲームミュージックはポップスと似ている? ―''ぼっちの音楽''をよりよいものにするために―

いよいよ9本目。今回は長めのコラムです。

RPG作品『空の軌跡FC』から、クールでジャジーな戦闘曲「Sophisticated Fight」をご紹介。しようと思っていたらあまりにも長文になってしまったので、それを次回にまわしまして。


まずはまあ、ちょこっと聴いてみてください。

www.youtube.com

 『空の軌跡FC ORIGINAL SOUND TRACK』に収録。 

 

これほど''耳焼けしない''ゲームミュージックにはなかなか出会えません。

コラム内容の都合上、消極的な言い方になってしまいますが。

実際にこのゲームをプレイしていた頃は、この楽曲を聴くためだけに(!)、意味なく戦闘を繰り返したもんです。そして音楽だけ流しながら放置。

実はこれボスとかでなくふつうの戦闘曲で、ただでさえ何度も聴いているはずだったのに。

 

そんな良き出会いを求めて、ゲームミュージックはいまでもよく聴いています。

 

ゲームミュージックはポップスと似ている

しかしながら気にかかるのが、とかくゲームミュージックはポップスと似て、コテコテになってしまいがちなこと。言い方を変えると、''世界観''や''空気感''、''行間''を感じられないこと。(ニュアンスがわかりにくいので、お好きな表現をお選びください。)

もちろん、それには仕方ない部分も大きいと思います。

メロディーがわかりやすくはっきりしてないと印象に残る雰囲気作りって難しいんだろうし、データ量や再生端末の制限もあるし、そもそも音楽が全てじゃないからかけられるコストも限界があろうし。

そうやって程度の差こそあれ音楽的な妥協をふまえてつくられるゲームミュージックは、ここでもポップス同様、良くも悪くも、一種の工業製品として量産される''消費される(べき)音楽''という側面を持つことになります。

 

いわゆる''ぼっち''と''リア充''の二項対立とも重なるこの2つの音楽ジャンルですが。

実はこれら、''商品''として見ると、訴求対象が異なるだけで特質は非常に似ているのです。


ビット音楽というルーツ

ゲームミュージック特有の要因

しかしそこであえて、ゲームミュージック特有の要因を考えるのであれば、ルーツである''ビット音楽的手法''からの脱却がうまくできていない、ことが問題として挙げられるのではないかと思っています。

単純なビット音源で効果的だった作曲・マスタリング方法を、多種多様な楽器音源でもそのまま適用してしまった。2000年以降のゲームミュージックの多くが味付け濃いめになってしまった背景には、そのような事情があるのではないでしょうか。

では、楽器音源だと''耳焼けする''楽曲となってしまうのはなぜか。

 

ビット音源と楽器音源のちがい

それは、ビット音源と楽器音源の特性の違いによります。

ビット音源では、それはもともと足りない音なのですから、重ねることで''世界観''を表現しなければならなかった。

SFCGBA等も含めて、チープな音源の可能性を限界まで引き出してつくられる音楽は、それはすごくよいものです。(電子音楽の天才と言われたrei harakami氏の作品も近いうちに取り上げたいものです。チープな、という話からはすこしずれるかもしれませんが・・・)

いっぽう楽器音源では、それはもともとある種の''世界観''を備えた音なのですから、上手に重ねなければ、重ねるたびに個性が希釈されていってしまいます。

四つ打ち、ロック、オーケストラ、やたらと大音量のメロディー etc... 楽曲をインスタントに良いものにしようと重ねるたびに、それはどこにでもあるような楽曲に近づき、''世界観''の入りこむ余地を失ってゆきます。

これが、多くのゲームミュージックがポップス同様、''耳焼けする''量産型楽曲となりやすい原因のひとつです。

 

その作品でしかありえない、ゲームミュージックを。

そうはいっても、''ビット音楽的手法''からの脱却が必要か否かは、そのゲームの特性も考慮しながら議論すべきことです。だってゲームを盛り上げるためのミュージックですから。

そのゲームに本当に似合うのであれば、どんな手法でもためらわず選ぶべきです。

下記記事で以前も紹介したように、それも含めてグルーヴなのです。

digandselect.hateblo.jp

ただ、淡い水彩画を同色のモルタルで上塗りするようなコテコテ規格な音楽だけはなんとかしてください・・・。一度聴いただけでもうたくさんって感じになっちゃいます。これが飽きというものなのだ、としみじみ。

 

個人的には、もっとアンビエントゲームミュージックで良質なものが出てきてほしいなあと思っています。強引にテンションを上げにかかるようなのとは正反対の、気がついたらゲームの世界にのめりこんでいた、なんてことになるような楽曲。お部屋に流しておくだけでそのゲームの世界にひたれるようなものが望ましいです。高望みしすぎですか、さいですか。(いいのをご存知の方がいらしたらばぜひご教示ください。お願いします。)

もしくは、今回すこしだけご紹介しました「Sophisticated Fight」のように、本当にうまいことバランスをとった''空気感''のある作品がもっとたくさん生まれてくれれば楽しいなあと思うところでございます。

 

小説や漫画を読み返すように、いつまでも何度でも聴きたくなる、そんなゲームミュージックを。

 

「あ、ゲームミュージックとか、どうですか??」

少々長くなりましたが、この記事がすこしでも、皆様のゲームミュージックへの興味の手助けとなれば幸いです。

もしお気に召されましたら、シェアなど、ご自由にどうぞ。

 

では、次回は「Sophisticated Fight」をご紹介いたします。

オリジナルサウンドトラック「英雄伝説空の軌跡」

オリジナルサウンドトラック「英雄伝説空の軌跡」

 

 

またきっと、いらしてください。